ポッドキャスト: 品質の考え方:リスク・文化・パフォーマンスを関連付けて機会を生み出す
品質の考え方
2025年11月10日・36分
このエピソードでは、ザビエル・フランシスが、LRQAの審査部門マネージャー ビル・バーンズと、トレーニング・改善サービス部門マネージャー ダリウシュ・アントンチックを迎え、品質に関する考え方が、単なるマネジメントシステムから組織全体に広がる重要な価値観へと進化してきた背景を探ります。
二人は、ISO 9001の誕生から、現在のリスクマネジメント、レジリエンス、リーダーシップを組み合わせたアプローチに至るまで、その変遷をたどります。実践的な事例や自身の経験を交えながら、一貫性、文化、継続的改善の原則が、現代のビジネスを支えていることを語ります。
さらに、これからの展望として、品質の考え方が次世代の保証分野の専門人材にどのような影響を与えているかを紹介します。品質、サイバーセキュリティ、サステナビリティ、安全性を一つのビジョンとして統合し、組織の質を高める力を備えた人材です。
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ザビエル・フランシス(00:14)
こんにちは。いつもお聴きいただきありがとうございます。LRQAのポッドキャスト「Future in Focus」へようこそ。進行を務めますザビエル・フランシスです。
本日は、特別なゲストを2名お迎えしています。LRQAのQHSE審査部門マネージャー ビル・バーンズと、トレーニング・改善サービス提供部門マネージャー ダリウシュ・アントンチックです。
お二人とも、参加いただきありがとうございます。
さて、今日は「品質」について、これまでとは違った視点で考えてみたいと思います。ISO 9001の進化や、他のISO規格への広がり、そして今後の品質リーダーシップについてお話しします。その前に、まずはゲストのお二人のこれまでの歩みについて伺いたいと思います。では、ビルからお願いします。これまでのご経歴について少し教えていただけますか?
ビル・バーンズ(01:04)
はい。現在、私はLRQAの北米地域で審査部門マネージャーを務めており、ISO関連のスキームを多数担当しています。全部で10種類のスキーム、約80名の審査員をまとめています。LRQAでISOマネジメントシステムに関わってきたのは、ほぼ20年になります。2019年からフルタイムで、ここ数年はマネージャーとして活動しています。
ただ、それ以前にも数十年にわたり、製造業、コンサルティング、トレーニング、審査など、ほぼすべての業界で経験を積んできました。キャリアのスタートは航空宇宙分野の製造技術者で、その後いくつかの業界で働いてきました。ですので、お客様の視点からの期待を理解する力には自信があります。どんな業種であっても、常に学びがあり、今日のような機会もその一つです。本当に刺激的で、常に新しい発見があります。
ザビエル・フランシス(02:10)
ありがとうございます。では、ダリウシュの経歴も教えてください。
ダリウシュ・アントンチック(02:14)
こんにちは。キャリアは少し短めです。品質やマネジメントシステムに関わり始めたのは約15年前で、主に自動車業界でした。自動車業界では、品質システムや顧客の期待だけでなく、環境や労働安全衛生にも取り組みました。また、欧州各地の工場でリーン(ムダを省く効率化手法) や継続的改善のプロジェクトにも多く関わりました。
その後、8年前にLRQAに入社し、シニアトレーナー兼コンサルタントとして主要なお客様向けに研修を担当しました。そして3年前からは、英国とアメリカ地域のトレーニング・改善サービス部門のマネージャーとして、優秀なトレーナーのチームをまとめています。現在は、社内の仲間と協力しながら、お客様に最適な研修プログラムを作る仕事をしています。それが現在の役割です。
ザビエル・フランシス(03:21)
では、ここから本題に入りましょう。今週は World Quality Week です。ISO 9001について学び、取り上げる週です。
ISO 9001が初めて導入されたとき、企業の働き方に新しい視点をもたらしました。品質マネジメントだけでなく、ISO 14001、45001、27001など、他の規格の基盤にもなりました。これらのシステムは、品質・リスク・レジリエンスの関係性を企業が理解を深めるために役立っています。
では、まずビルに伺います。ISO 9001が登場したとき、なぜそれが画期的だったのでしょうか?そして、企業の「一貫性」や「改善」に対する考え方はどう変わったのでしょうか?
ビル・バーンズ(04:05)
ISO 9001は、英国規格 BS 5750を基に生まれました。それは1970年代後半にさかのぼります。つまり、この考え方や実践は長い歴史があります。当時は軍需産業向けの高度な規格を取り入れたものでした。それが進化し、1987年にISO 9001となりました。その後、いくつかの改訂がありました。重要なのは、1994年、2000年、2008年、そして最近の2015年版です。そして近いうちに2026年版が登場します。
この規格は、業界や国境を越えて品質を確保するために作られました。継続的改善を促し、製品やサービスの一貫性を保つための枠組みを提供します。これはグローバル市場にとって非常に重要です。さらに、顧客や規制の要求を満たすための仕組みを提供します。時代とともに、単なる秩序や一貫性から、顧客重視、リスクに基づく考え方、そして今ではリーダーシップの強化へと進化しています。
私は多くのISOスキームに関わっていますが、80名のチームと共に取り組む中で、共通する基盤があることを実感しています。
ザビエル・フランシス(05:43)
なるほど。
ビル・バーンズ(05:43)
なぜかというと、品質は企業経営における重要な視点だからです。もともとは財務リスクを管理するための仕組みでしたが、今では新たなビジネスリスクにも対応するよう進化しています。これが過去から現在、そして未来への流れです。
ザビエル・フランシス(06:11)
ISO 9001は最初のISO規格だったのですか?
ビル・バーンズ(06:14)
ISO 9001は初期の規格の一つでした。そして興味深いのは、その枠組みが何度も応用され、さまざまなマネジメントシステム規格に発展してきたことです。
ザビエル・フランシス(06:29)
なるほど。ありがとうございます。では、ダリウシュ、初期の頃の教訓で、今も企業を導いているものは何でしょうか?そして、それが他の規格の開発にどのように影響したのでしょうか?
ダリウシュ・アントンチック(06:42)
ISO 9000、つまり品質マネジメントシステムは、企業や品質に大きな影響を与えました。最大のポイントは、品質は「品質部門だけのものではない」ということです。品質は企業全体を対象とする仕組みです。これはISO 9000が当初から重視していた考え方です。品質検査員がいなければ品質が保てない、というものではありません。品質は組織全体の一部であり、その考え方が企業を形づくり、製品の品質を保証することにつながります。
ビルが言ったように、品質の目的は顧客の期待に応えることです。品質そのものが価値なのではなく、顧客の期待に応えることで価値を生みます。これは2015年版のISOだけでなく、過去の版にも共通する考え方です。ISOは、品質を企業経営の一部として位置づける方法を教えてきました。品質は、どこか離れた部署に閉じ込められるものではありません。
ザビエル・フランシス(07:58)
品質は、ある意味では「測定」でもありますね。
ダリウシュ・アントンチック(08:01)
そうです。そしてISOは、品質を標準化しました。これはサプライチェーンだけでなく、世界全体で品質を統一するという大きな利点があります。ISOがなかったら、世界はどうなっていたか想像できません。
ビル・バーンズ(08:19)
測定の話に戻りますが、品質はもともと測定から始まりました。しかし今では、品質やマネジメントシステムは企業のパフォーマンスを高めるためのツールになっています。初期の頃は、標準に沿って一貫して測定することが品質でしたが、今では製品や収益を実現するための手段になっています。
ザビエル・フランシス(08:56)
そこから進化してきたわけですね。では、品質が他のシステムにつながる道筋について教えてください。ISO 9001は、どのように他の規格の発展につながったのでしょうか?
ダリウシュ・アントンチック(09:08)
特に2015年の改訂以降、共通の構造が導入され、システムの統合が容易になりました。ISO 9000は、企業の仕組みを形づくる最初の規格です。現在、多くの企業はISO 9000を環境、労働安全衛生、エネルギー、食品安全などのシステムと組み合わせ、継続的改善の考え方で強固な組織を構築しています。
その中心にあるのが PDCAサイクル です。これはISOの一部であり、古くからある手法に基づいています。PDCAは、ISO 9000が他の規格と連携し、企業が顧客の期待だけでなく、従業員や環境など幅広い期待に応えるための仕組みです。
ザビエル・フランシス(10:15)
すべての規格は共通の構造(附属書SL)を持っていますね。そして、リスクベースの考え方もISO 9001から始まっています。
ビル・バーンズ(10:28)
そうです。今では規格や認証の統合が進んでいます。それに対応するため、私たちは幅広いスキルを持つ審査員を育成し、複数の規格に対応できる体制を整えています。現代の品質リスクには、製品や情報の管理が含まれます。情報時代に入り、ISO 27001のような情報セキュリティ規格が登場しましたが、基本的なプロセスは同じです。また、責任ある調達やサプライチェーン管理も品質の一部でしたが、今では独立した規格として発展しています。ISO 45001も大きな役割を果たしています。
ザビエル・フランシス(11:29)
そうですね、リスクの観点から見ると、ISO 42001のAI関連の動きもあります。これは本当に管理が必要な分野です。こうして規格が進化しているのがよくわかります。
ダリウシュ・アントンチック(11:40)
ISOは常にリスクを管理し、良い結果を保証することを目的としてきました。しかし最近では、新しいISOのDIS規格で「機会」の重要性が強調されています。リスクは悪いことだけではなく、行動を起こし、ビジネスの機会を活用することも含まれます。品質は、問題を防ぐだけでなく、機会を管理し、ビジネスを成長させるためのものです。ISOはそのための仕組みを支援しています。
ビル・バーンズ(12:19)
そうですね。ISO 56001は新しいイノベーションマネジメント規格です。これはマネジメントシステム規格であり、リスクと機会の両方に焦点を当てています。新しい考え方で、企業がリスクを見極めながら機会をつかむことを支援します。現在、いくつかの企業とISO 56001の認証に取り組んでいますが、まだ認定は始まったばかりで非常に新しい分野です。
ザビエル・フランシス(12:52)
世界的な視点で見ると、2020年の新型コロナ感染症の時期を思い出します。あのとき、多くの企業は「リスクに直面したとき、どこに機会があるのか」を考えざるを得ませんでした。新型コロナ感染症の期間中、必要な製品を作る方向に転換した企業もありました。それはイノベーションであり、リスクから生まれた機会でした。仕事がなく、サプライチェーンも止まった状況で、企業は新しい道を見つけたのです。まさに「コインの両面」を活用するということです。
さて、ビル、ISO 9001が企業の幅広いリスクマネジメントにどのように影響を与えたか、そして品質がサイバーセキュリティや責任ある調達、気候対応などの分野とどうつながっているか、もう少し詳しく教えていただけますか?
ビル・バーンズ(13:47)
私は「つながり」という言葉をよく使います。これは、将来の保証分野の専門家に必要なスキルです。根本原因分析はなくなりませんが、ビジネスリスクの本質に踏み込む力が求められます。職場文化についても、新しい要素が出てきています。人々がより良い結果を出すためにどう協力するか、世代の変化も影響しています。新型コロナ感染症は働き方に大きな変化をもたらしました。ISO規格は、こうした文化を重視する方向に進んでいます。職場文化、共有する価値観や規範、人々が声を上げること。パンデミック中は画面越しで難しかったことが、今は職場で再び重要になっています。ISOは「これを軌道に戻そう」としています。特にISO 9001では、文化が新しいパフォーマンスドライバーになっています。問題が市場に出る前に「これはおかしい」と声を上げられる文化が必要です。
ザビエル・フランシス(15:31)
そうですね。以前のポッドキャストでも、ISO 9001やISO 14001の新しい改訂への移行について話しました。文化がすべての新しい改訂で重要視されていることは明らかです。では、ダリウシュ、文化とリーダーシップは、統合されたマネジメントシステムの成功にどう影響しますか?そして、LRQAは企業がシステムを連携させるためにどのように支援していますか?
ダリウシュ・アントンチック(16:22)
文化は非常に重要です。審査や研修で多くの企業を訪問すると、文化があるかどうかでシステムの実効性が決まることがわかります。文化がなければ、システムは単なる書類や共有フォルダのファイルにすぎません。文化があれば、人々はそれを話題にし、自然に行動します。手順を知らなくても、文化に基づいて正しく仕事ができます。文化が正しければ、企業の成長を支え、最終的には顧客に利益をもたらします。品質文化があれば、人々はミスを隠さず、どのシフトでも、週末でも、誰も見ていないときでも、最善の方法で仕事をします。
これは品質だけでなく、労働安全衛生や環境の文化にも共通します。職場での行動が家庭でも同じ価値観に基づいているか、資源を大切に扱っているか。文化は企業が成長し、競争力を維持するために不可欠です。文化がなければ、ビジネスは前に進めません。
ザビエル・フランシス(17:57)
他のポッドキャストでも話しましたが、現場の人々の意見を取り入れることは重要です。製造ラインの人々は機械や工程を誰よりも理解しています。彼らのアイデアを取り入れることで、プロセス改善に参加する意識が高まり、品質文化が強化されます。
ビル・バーンズ(18:33)
そうですね、統合という点では、ダリウシュのチームは世界中の顧客と社内で取り組んでおり、統合された審査員がますます増えています。私のチームでは、主要な規格であるISO 9001、14001、45001をすべて対応できます。現場や管理職が「複数のリスク」を抱えているとき、その中には品質に関するものもあれば、関連するものや別のものもあります。それを包括的に扱うことで、より多くの理解と協力が得られます。例えば、安全管理者に品質関連の質問をしても、安全面の要素が含まれる場合があります。防護措置を導入するなどの対応です。こうした審査を、企業が日常的に行っている業務と同じように進めることで、現場での会話が「一つのこと」だけにとどまらなくなります。それが統合の価値です。
ザビエル・フランシス(19:42)
確かに、品質担当者と安全担当者が対立するのではなく、互いに理解し合えるようになると、バランスが取れますね。安全性と生産性の両立、その相乗効果は非常に有効だと思います。
ビル・バーンズ(19:57)
以前は意見が対立することもありましたが、今は2025年です。状況は変わっています。
ザビエル・フランシス(20:07)
そうですね。ダリウシュ、言いたかったこと、そしてLRQAがどのように顧客の統合を支援しているか、ぜひ教えてください。
ダリウシュ・アントンチック(20:13)
文化は、私たちの研修プログラムで扱う重要なテーマの一つです。私たちは、品質、環境、労働安全衛生のシステムを改善し、組織全体を強化するために顧客を支援しています。最も効果的なのは、カスタマイズされた研修です。まず顧客の業務を理解し、その後、研修を提供し、統合を支援します。
研修では、品質部門だけでなく、他部門の参加者も含めます。隣の席に座っていても、互いの業務を知らないことがありますが、研修で一緒になり、統合されたシステムについて議論します。これは大きな価値を生みます。特に、顧客の手順や方針に基づいた研修を行い、実践する場合です。文化が組織でどう機能するかを体験し、時には課題に挑戦します。研修が新しいプロセスの導入や改善のきっかけになることもあります。
ビルのチームに統合された審査員がいるように、私のチームには統合されたトレーナーがいます。彼らは顧客にとっての機会を見つけます。たとえ顧客が環境認証を持っていなくても、品質システムだけであっても、環境課題への対応や規制遵守、コスト削減を支援できます。最終的には、より良い体験を提供することが目的です。
ザビエル・フランシス(21:50)
そうですね。ISO 14001の認証を目指していなくても、品質に影響します。こうした要素の相互関係を理解することが重要です。では、最後のパートに入りましょう。次世代の品質に携わるリーダーや審査専門家に必要なスキルとは何でしょうか?そして、企業はどのように人材を準備し、より統合的なリスクマネジメントを実現できるのでしょうか?
ダリウシュ・アントンチック(22:17)
一部では「知識のギャップ」があると言われますが、私はそれを機会と捉えています。新しい世代は異なる視点を持ち、協働に前向きで、データ活用やデジタル技術に非常に慣れています。これはISO 9000に沿ったビジネス運営を支援し、より包括的なアプローチを可能にします。品質だけでなく、他の分野にも目を向け、ビジネス全体を理解し、成長を支援できます。
ザビエル・フランシス(23:04)
つまり、知識のギャップというより、新しい考え方による認識の違いということですね。
ダリウシュ・アントンチック(23:11)
そうです。新しい世代の考え方やビジネスの捉え方は、私が研修で接する中でも感じます。ISO 9000もこのアプローチを支援しています。紙の書類より実践を重視する方向です。これは、品質管理の手引きに縛られていた90年代とは大きく異なります。
ザビエル・フランシス(23:60)
世代交代は本当に興味深いですね。私にも20代の子どもがいますが、考え方は違います。でも、それが間違いというわけではなく、取り入れることで大きなメリットがあります。
ダリウシュ・アントンチック(24:10)
そうですね。最近の事例ですが、ある企業ではサプライヤー審査プログラムを複数持っていました。ESG、品質、労働安全衛生など、それぞれ別の専門家が担当していましたが、これを一つのプログラムに統合しました。研修を受けた人たちは、最初は専門外だと感じていましたが、後に品質、環境、安全、サステナビリティなどを総合的に評価できる優れたサプライヤー審査員になりました。若い世代でも、正しいアプローチがあれば大きな成果を出せます。
ビル・バーンズ(25:08)
もう一つ例を挙げます。人工知能(AI)についても触れたいと思います。
ザビエル・フランシス(25:17)
最大のテーマですね。
Bill Barnes: 25:38
今では、同じ人たちがエージェントや大規模言語モデルを構築し、品質課題に取り組んだり、業界全体でモデルを共有したりしています。これが世代間の違いです。私にも20代の子どもがいますが、彼らはコードや言語を扱うことに慣れています。そして「この学習モデルを使って仕事をどう効率化できるか」を考えます。「なぜこんなに多くの人が同じ作業を繰り返しているのか?」という疑問を持ちます。怠けているのではなく、賢いのです。「ツールボックスがあるなら、それを使って次の面白いことに進もう」という発想です。
将来の品質に携わる人材は、コードを書く必要すらないかもしれません。AIがコードを書いてくれるからです。必要なのは、問題を分析し、ワークフローを設計する力です。従来の世代が長年やってきたことを、自動化し、AIに考えさせ、動かす。それが今、可能になっています。
ザビエル・フランシス(27:05)
なるほど、よくわかります。
ビル・バーンズ(27:07)
それがこれからの方向性です。
ザビエル・フランシス(27:08)
以前のポッドキャストで、製造業におけるAIについて話しました。私はセンサーや自動化の話だと思っていましたが、実際には大規模言語モデルを使って、人員不足や業務課題を解決する方法でした。「問題を入力すれば、選択肢を提示してくれる」という発想です。製造業と聞くと「ものづくり」を想像しますが、その裏には膨大な物流や計画があります。AIはそこを支援できます。
ビル、LRQAはどのように審査コミュニティのスキルを広げ、将来の品質とリスクマネジメントに確信を持っているのでしょうか?
ビル・バーンズ(27:58)
私たちは、マネジメントシステムの基本原則と審査の基礎をしっかり身につけることを重視しています。そのうえで、クロストレーニングを行い、審査員のスキルを広げています。業界やスキームごとに必要な能力を示すコードを設定し、実際の審査に同行して学ぶ機会を提供します。こうして幅広い視点を持つ人材を育成しています。品質と安全の担当者が対立している場面でも、両者の意見を聞き、共通の解決策を見つける力が求められます。それができる人材を増やすことが、私たちの目標です。
ザビエル・フランシス(29:29)
素晴らしいですね。まとめると、品質は企業の一部ではなく、すべての活動とつながっています。規格はリスクと機会の両方に対応するために進化しており、品質の視点でビジネス全体を考えることが重要です。新しい世代には知識のギャップはなく、異なる視点と創造性があります。それが次世代の品質専門家やコンサルタント、企業の品質担当者を支える力になります。
では最後に、ダリウシュとビル、それぞれ一言お願いします。
ダリウシュ・アントンチック(30:55)
ありがとうございます。最後に一つ。今回の打ち合わせの前に、自分のISO規格を見直しました。時々情報を確認するのですが、序章を読み返しました。序章は審査対象ではないため、見落とされがちです。審査は第4章から始まりますが、序章は非常に重要です。ISO 9000に関わるすべての人に、もう一度序章を読んで考えてほしいと思います。そこには品質の基本原則が書かれています。顧客重視、リーダーシップ、人々の積極的参加、関係性の管理、事実に基づく意思決定、そしてリスクベースの考え方です。品質の専門家であっても、日々の業務やデータに追われる中で、こうした基本を忘れがちです。序章を読むことで、品質システムや顧客重視をどう捉えるべきか、改めて考えるきっかけになります。それが今日の私からのアドバイスです。
ザビエル・フランシス(31:53)
つまり、序章には全体を見渡す視点が示されているということですね。私ももう一度読み返そうと思います。大変参考になりました。
ダリウシュ・アントンチック(32:02)
はい。序章はとてもわかりやすく書かれています。条項のような堅い文章ではなく、品質の考え方を物語のように説明しています。
ザビエル・フランシス(32:10)
なるほど、その視点で読んでみます。ありがとうございます。では、ビル、最後にお願いします。
ビル・バーンズ(32:17)
もちろんです。品質は、ダリウシュが述べたように、長年にわたって企業の成果を支えてきた重要な要素です。品質がなければ、私たちの社会は今のような発展を遂げられなかったでしょう。航空宇宙から医療まで、あらゆる分野で品質が大きな役割を果たしてきました。そして、これからの重要な鍵は職場の文化だと思います。品質の歴史と結びつきながら、価値を提供し続けるためには文化が欠かせません。経済的なプレッシャーが強まる中で、より良い方法を見つけ、人々を巻き込み、効率的に取り組むことが求められています。
ザビエル・フランシス(33:44)
そうですね。世界的なサプライチェーンには課題がありますが、品質という基盤を持ち、そこから他の要素に目を向けることは、企業にとって大きな助けになります。
ビル・バーンズ(34:06)
例えば、サステナビリティ担当者が責任ある調達を提案し、それが品質や生産の課題を解決することもあります。より信頼できる資材を確保し、コストを下げ、社会的なリスクも減らせる。品質担当者が「なぜサステナビリティの人がここに?」と思っても、それは非常に有益な発想なのです。
ザビエル・フランシス(34:35)
本日はありがとうございました。専門的な知見を共有いただき感謝いたします。World Quality Weekをどのように過ごすにしても、ぜひ有意義な時間にしてください。
そして、リスナーの皆さま、最後までお付き合いいただきありがとうございました。過去を振り返り、品質の未来を考えるこの時間が、皆さまにとって価値あるものになったことを願っています。変化の激しい世界で、今年のWorld Quality Weekのメッセージを心に留め、品質がビジネスに与える影響や、それがもたらす変化と機会について考えてみてください。
新しい改訂版では、進化する概念や原則が導入されますが、それを企業文化の一部として受け入れることが重要です。詳細はLRQAのWebサイトでWorld Quality Weekの記事をご覧ください。今後も「Future in Focus」ポッドキャストをぜひご期待ください。
ISO 9001の誕生から、品質、安全、サステナビリティ、サイバーセキュリティを統合した現在のシステムまで、一つだけ変わらない原則があります。それは「進歩は、異なる視点から考えることにかかっている」ということです。この考え方は、企業がリスクを管理し、信頼を築く方法を定義し続けています。
ご覧いただきありがとうございました。